院長 平竜三のブログ診察室では伝え切れない、詳しい医療情報を語ります

広義のプラセボ

  • 2008.03.21

【4】プラセボ効果 続き。広義のプラセボ

 プラセボは元々、偽薬、つまりクスリに関わる言葉です。

 
 プラセボは、本物の薬(薬理効果が十分に期待できる成分が含まれている薬)の効果を、心理的効果を抜きに判定するために、比較対象試験の際に使われます。現代においては、厳密な統計科学的試験のためにはランダム化対象試験 (Randomized Controlled Trial)が実施される場合が多く、プラセボの利用が不可欠となっています。

 
 しかし、医学の中では更に意味が拡大され、「クスリ」以外の他の治療技術や手段に関して、本物の治療のように見せかけて実際にはその実質的治療を行っていない手段のことを示すことがあります。つまり「偽治療」のことをプラセボと言うことがあり、これが「広義のプラセボ」です。

 
 ただし、プラセボの治療は「偽治療」とは言っても、患者さんを騙す目的の「悪徳治療」ではありませんのでご注意を。

 例えば、「プラセボ手術」や「プラセボ放射線治療」などが実際に行われたことがあります。

 
 プラセボ手術など、クスリ以外の治療手段に用いられる場合のプラセボは、クスリの場合とは若干異なり、対象試験で真の効果を判定するのが目的ではなく、寧ろその心理効果を期待するということに主眼があります。そもそもクスリと違って、プラセボ手術を多くの人に実施するなど、倫理的にも出来ないのです。

 
……続く

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