健康情報: 2008年3月記事リスト

【6】指坐薬(ゆびざやく)って何? 究極のプラセボ

老人の多い入院病棟に勤務経験のある医師や看護師であれば、大抵は知っているプラセボがあります。

長く入院している患者さんの中には、慢性的な痛みの発作などで苦しまれている方も大勢いらっしゃいます。夜間などでは飲み薬や注射が使いにくいのでしばしば坐薬を頓用で使う場合があります。

「看護婦さーん、痛いです。痛み止め下さーい」と何度もナースコールをされる方もいます。

それで看護師さんは坐薬を入れてあげに行くわけですが、坐薬も1日に使える数には限りがあります。それでも何度も何度も痛みでコールされる場合、やむなく、「指坐薬」を使う場合があります。

坐薬とは、ご存知の通り、肛門から直腸内に入れる弾丸型のクスリです。直腸の中で体温で溶けて、腸粘膜から薬効成分が吸収されます。痛み止めの成分は、口からの飲み薬は胃の粘膜を障害しやすいのですが、腸粘膜に対しては比較的障害が少ないので、口から飲む痛み止めよりも多くの量を使用することができます。しかも直腸粘膜からの吸収は速いので、速く強い鎮痛効果が期待できます。

では「指坐薬」とはなんでしょうか?

入院中のお年寄りや、若くてもやや重症の患者さんの場合、坐薬は自分で入れるのではなく、看護師さんに入れてもらうことが多いですが、お尻に入る時しか感覚はわかりません。入ってしまうと、中に坐薬が入っている感じははっきりしないようです。

「指坐薬」とは、指を坐薬のようにして(ゴム手袋はキチンとしていますから、指は汚れません)、指を肛門の奥に一旦刺し込んで、それで終わり、という、一つのプラセボ治療法です。

指をお尻に差し込んだ後に
「はい、しっかり入れましたよ」と一声かけてあげれば、患者さんは坐薬を入れてもらったと信じてくれます。

実際には坐薬は入れていなくても、患者さんが
......坐薬を入れてもらったのだから、痛みも落ち着くはずだ
と安心してくれれば相当の割合で坐薬と同程度の効果を発揮します。

坐薬は何度も入れすぎると胃腸の粘膜をただれさせる危険もありますが、指坐薬の場合は当然ですが、薬の副作用はありません。

指坐薬は、肛門の感覚で痛みの感覚を逸らせてしまうのかもしれません。

あるいは夜中に一人ぼっちで寝ている場合などにその孤独感や恐怖感が強くなり、誰かに来てもらって安心したい、などの心理的な問題が、痛みとして発現してしまっているのかもしれません。

いずれにしても、心の問題は痛みに大きく関連していることは間違いないようです。

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【5】プラセボ手術って?

では、プラセボ手術、とはどんな場合に行われるのでしょうか?

例えば以下のようなシチュエーションです。

ある患者さんが非常に慢性的な腹痛を訴えていました。検査をしても全く異常はみられません。

心理的な原因と考えられて様々な精神安定剤などのクスリを投与されても全く効果がなく、患者さん本人は、
「お腹の中に絶対に病変がある」、と頑なに信じ、
「これを切除してくれないと自分は決して治らない」と主張しています。

その場合、医師の判断で、プラセボ手術が行われる場合があります。

実際に腹部を切開し、腫瘍など無かったとしても、そのまま調べるだけで傷を閉じます。術後の説明で「悪いところは全て取りましたよ」と説明することで、患者さんが心理的に満足して症状が軽快することがあります。

実際に手術を受けた、という事実と、医師からの説得力と真実味のある説明が患者さんを心理的に安心させ、症状を改善させたのでしょう。

しかし必ずしも同様に患者さん全てに成功するというわけではありません。


プラセボ放射線では次の例があります。

非常に難治性の病気があり、治療法が見つからなかった患者さんがいました。

主治医は色々と思案し、放射線技師と相談して偽の治療光線を当ててみることにしました。

主治医は患者さんに次のように説明しました。
「非常に効果の高い、新しい治療法が開発されました。それは一種の放射線であるが、何も感じず、副作用も全くない。一瞬浴びるだけで全身に行き渡り、短時間であなたの健康を取り戻すことが期待できるが、受けてみる気はありますか?」

患者さんは承諾し、治療室に入りました。そして派手な「ジー、ガシャーン!!」という機械が鳴り、一瞬で終了しました。

医師は、「はい、これで完了です」

治療の直後から、その難治性の患者さんの病気は、嘘のように劇的に改善したのです。

実際には機械の音を鳴らしただけで、X線はもとより、何の放射線も浴びせていなかったにも関わらずです!

これは笑い話で終わらせるべきではなく、心と体と病気の関連性の強さを示唆する例として重要です。近年では、精神神経免疫学 (Psychoneuroimmunology)と呼ばれる新しい医学分野で、このようなプラセボ効果についても真剣に研究されるようになってきました。

続く

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【4】プラセボ効果 続き。広義のプラセボ

プラセボは元々、偽薬、つまりクスリに関わる言葉です。

プラセボは、本物の薬(薬理効果が十分に期待できる成分が含まれている薬)の効果を、心理的効果を抜きに判定するために、比較対象試験の際に使われます。現代においては、厳密な統計科学的試験のためにはランダム化対象試験 (Randomized Controlled Trial)が実施される場合が多く、プラセボの利用が不可欠となっています。

しかし、医学の中では更に意味が拡大され、「クスリ」以外の他の治療技術や手段に関して、本物の治療のように見せかけて実際にはその実質的治療を行っていない手段のことを示すことがあります。つまり「偽治療」のことをプラセボと言うことがあり、これが「広義のプラセボ」です。

ただし、プラセボの治療は「偽治療」とは言っても、患者さんを騙す目的の「悪徳治療」ではありませんのでご注意を。

例えば、「プラセボ手術」や「プラセボ放射線治療」などが実際に行われたことがあります。

プラセボ手術など、クスリ以外の治療手段に用いられる場合のプラセボは、クスリの場合とは若干異なり、対象試験で真の効果を判定するのが目的ではなく、寧ろその心理効果を期待するということに主眼があります。そもそもクスリと違って、プラセボ手術を多くの人に実施するなど、倫理的にも出来ないのです。

続く

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【3】プラセボ効果 続き。 人は騙されて効く?

プラセボ、は偽クスリのことでした。病気に効く薬を飲んでいる、という安心感は、少なからず症状を緩和することがしばしばみられます。
人は、精神の安定が症状の改善に密接に関係していることがわかってきました。

心と体を繋いでいる神経のインターフェイス機構が自律神経です。暗示的に潜在意識に作用したイメージは、意識しないうちに自律神経を介して体に作用します。暗示は良い作用も悪い作用ももたらす可 能性があります。

プラセボ効果の存在は、医療の現場では広く認識されています。

私も勤務医時代、病棟の入院患者さんを診ていて、不眠や痛み、不安発作などを頻繁に訴える方に、時にプラセボを処方したことがありました。プラセボを出した理由の一つは、痛み止めや睡眠剤をあまり頻回に飲むと副作用が心配であるからです。

このプラセボが非常によく効く場合があり、患者さんも、「あのクスリはとても良く効いた」と気に入ってくれて、その後も毎日のように要求されることがありました。

もちろん効かない人もいましたが、患者さんによっては本当の消炎鎮痛剤や睡眠薬よりも良く効いてしまうことがあったのが興味深く私の臨床体験として記憶にあります。

プラセボを患者さんにお出しすることについては、倫理的には患者さんご本人の承諾を得て与えるべきとされていますが、本人に「偽薬」であることを伝えてしまってはプラセボ効果が無くなってしまいますよね? ですから逆に、
「これはよく効く薬ですよ」
「前のクスリが効かなかった方にもこのクスリでしたら効くと思います」
などと言う言葉を添えてお渡しする方が良いと私は考えます。

これはあえて表現するなら、「嘘をついて」「騙して」いることにはなりますが、ある程度必要なことだと考えています。

その辺りはベテランの看護婦さんは、患者さんに優しく熱心に言葉をかけてあげていました。

人の優しさや心のぬくもりが心理的安心感をもたらし、プラセボ効果に上乗せされて効果を高めるのかもしれません。

ちなみに、今現在は私のクリニックでは偽薬(プラセボ)は一切お出ししてはおりません

f(^ ^ ;

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【2】プラセボ効果とは?

「プラセボ効果」という言葉はご存知でしょうか? 「プラシーボ」とも呼びます。

英語の綴りはplacebo。日本語では「偽薬」効果、と訳されています。

プラセボ効果とは、簡単に言うと、
「このクスリは良く効く」と思い込んで飲むと、例え薬効がないはずの偽薬であっても病気の症状などが良くなってしまう効果のことです。良い意味での暗示効果と言えます。

「プラセボ」とは、偽薬。「ぎやく」と呼びますが、その名の通り、にせぐすり、です。

何か本物の薬があるとして、例えば錠剤だとすると、それと外観や重さなどがそっくりに作られたものがプラセボです。プラセボの材料としては、人間には少量ではほとんど体調に影響の無い乳糖などが用いられることが多いようです。但し、乳糖不耐症の人などには下痢などの症状を現す可能性もあります。

プラセボは薬剤開発で重要な役割をしています。

というのは、プラセボだけでも人によっては非常に高い効果が出る場合があるのです。ですから、新しく開発した薬剤が、本当に効く薬かどうかを調べるには、プラセボに比べて統計学的に差が出る程度に効いたことを判定しなければなりません。

人間は、「おまじない」が効く動物です。

これ自体は悪いことではありません。つまり人間は暗示というしくみを利用し、自律神経を介して心と体を繋ぎ、自分で自分を治す力を高めることが出来るわけです。

長い歴史の中で「薬」というものの存在が当たり前のように浸透している社会においては、私たちはそれが「薬」であると認識すれば、相当に強い暗示効果を一瞬にして自分にかけてしまいます。

これは無意識におこる社会的な暗示といえます。

現代では、「これは効く薬だ」と認知されていて何度も広告で見聞きしていたり、医師から効果を説明されたりすることで、恐らく古代のカリスマ祈祷師が行う呪術よりも強い暗示効果を発揮しているかもしれません。

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【1】ブログ再開のご挨拶

こんにちは。小豆沢整形外科 院長の平です。

中断していた当ブログですが、今日から再開いたします。

患者様方には随分長い間お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。

しばらくブログが止まっていた最大の理由としては、ここ1年ほど私達のクリニックに流入する医学情報の量があまりに膨大で、その検証と整理が追いつかなかったことです。

今、医学生物学、健康科学の分野では、水面下でものすごい進歩がみられています。「水面下」と表現したのは、臨床現場で保険診療として多くの患者さんがご利用できる状態にはなっていなくても、既に発見されている治療法や治療薬などは数え切れないほどある、ということなのです。

このブログは私の私見ではありますが、予防医学を推進する医師の立場として、正しい医療健康情報をお伝えする責任がありますので、昨年は勉強の期間とさせていただきました。

しかし、是非ともお伝えしたい内容が貯まっております。これからは整理しつつお伝えして参りますので、どうぞご期待下さい。

一般には常識と認識されている健康情報にも重大な誤りも多数混入しています。

中には事実でありながら、テレビや新聞などの大メディアでは決して述べてはいけない(?)とされているタブーもあります(例:牛乳・乳製品によって重大なる健康被害を生じていること、自然放射線の百倍を浴びると細胞が若返ってガンも減ること、オール電化住宅のIHヒーターはやっぱり危険であること、地球温暖化と二酸化炭素増加とはほとんど関係がないこと......etc.)。

メディアによる洗脳に関しては、後ほどテーマとして取り上げて詳しく述べます。

当ブログには、読者のあなたにとっては、「信じられない」と思うことも多々あるかも知れませんが、私としては自分を偽らず、科学者・医師としての信念に基づき、極力真実の情報を語っていきたいと思います。

では、次回、また会いましょう。

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