禁煙治療: 2008年12月記事リスト

今まで何度も述べましたが、一人一人の健康のためにも、医療費の削減のためにも、国全体の経済的利益のためにも喫煙率を減らすことは正しい道だといえます。

喫煙率を減らすには、喫煙者を禁煙させることはもちろん、若い世代の非喫煙者が新たに喫煙習慣を身につけないようにすることです。前回も述べたように、若い世代は周囲の人々、既に吸っている大人の影響を受けてタバコに大人っぽさやかっこよさをイメージし、大人たちを手本として吸い始めることが多いのです。

ですから、特に社会的に影響力を持ちリーダー的立場の大人たちがタバコを吸わず、毅然としてタバコを否定する姿勢をとることが大切です。

では一般的に人々の注目を集める職業や立場の人々とはどのような人かというと、とりあえず教師・医師・弁護士・政治家・経営者・重役などではないでしょうか?

私も医師なので、とりあえず医師と喫煙について考えてみます。

日本医師会が2004年の2~7月にアンケートをとった3633件の回答を調査したところ、日本の医師の喫煙率は、男性医師21.5%、女性医師5.4%でした。2000年の調査時には、男性医師27.1%、女性医師6.8%だったので、この4年間で減少傾向にあります。また、日本人全体の喫煙率は、男性は約40%、女性は約12%ですから、医師の喫煙率は一般人口の約半分というところです。

けれども、他の先進国と比べると随分ひどいです。

例えば、スウェーデンの医師の喫煙率は6%、アメリカは3%、イギリスではなんとたったの2%という低率です。これらの国々では医師がタバコを吸わないのが当たり前。日本の医師の喫煙率の高さは突出しており、健康を守り、人々に手本を示すべき職業として恥ずべき数字です。

私も学会や医師の集まりなどに行くと、かなりの数の医師がタバコを吸っており、煙くてたまりません。国際学会では海外のドクターも多数参加するわけですが、喫煙スペースに集まっているのは殆ど日本人医師で、それを見て海外の先生方は日本人医師の禁煙意識の低さに唖然としています。医師としてのライフスタイルが海外の医師から軽蔑されかねません。

「医師の基本は、健康的な生き方を患者さんに示すロールモデル(手本)となることです。その中で禁煙はよい生活習慣の大切な要素となります。」

聖路加国際病院理事長で、90歳を超えて現役医師としてご活躍されている、日野原重明先生は紙面でそのように語っています。

喫煙に対して、「自分は患者の治療をするのが仕事。自分は医師だから、関係ない。自分は自分で責任を取るからいい。」のような態度の医師も中にはいます。でも自分がタバコ臭を匂わせながら患者さんに「禁煙しなさい」といっても説得力ありますか? ありません......。

どうも今までの医師は、医学教育の中でもそうでしたが、ひたすら「職人」としての医学・医療技術を教育されてきています。でもこれから予防医学に重点がおかれる社会では、医師は「教育者」「リーダー」としての手本を示す役割があります。以前はよく「医者の不養生」など、「反面教師」的なイメージがありましたが、これからは多忙でも健康長寿を身をもって示し、自分をアンチエイジングの実験台として努力すべきではないでしょうか?

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喫煙習慣は、初めに吸い始めるかどうかで決まります。

吸い始めたら大抵は脳がニコチン依存症になってしまうので、そのまま一生吸い続けてしまう人がほとんどだからです。喫煙率を下げて、社会医学的に国民の健康度を上げ、疾患を予防し、国民医療費を削減するには、新たに喫煙者の仲間になる人を水際で止めることが必要です。

わが国の状況はどうでしょうか? 最近になってようやく歩きタ条例が出きたり、「禁煙補助薬」が適応になり、タスポができるなど、ある程度の喫煙に制限が設けられるようになってきました。

けれども、「吸い始めさせない」ための対策はほとんどみられていません。

タバコは法的には、20歳以上になってから、と定められていますが、アンケート調査によると最初に吸い始めるのは、思春期・未成年が多いようです。喫煙者にインタビューでは、男性の吸い始め年齢が15.3歳、女性は16.5歳でした。

「なぜ吸い始めたのかと?」の質問では、「周りの人の多くが吸っていたので何となく」、という理由が最も多く、他には、「好奇心」や、「かっこいい」、「大人っぽい」、などの理由が続きます。

20歳を過ぎてから吸い始めた人も、結局は、大人になってタバコを吸っても良くなったんだから、「大人らしく」タバコを吸おうか、というような感覚でしょう。周りの大人が吸っているから「見習って」という人も多いようです。

また、喫煙者に対して、「タバコを吸い始めたきっかけとして、あなたが影響を受けた人・モノは何ですか?」の問いに、「友人」と答えた人がおよそ2人に1人で最多でした。次に親(16.1%)、恋人(7.9%)、同僚(6.4%)、テレビや映画などのメディア(5.8%)、と続きます。

今の我が国では、吸い始める前の若い世代の中に、まだタバコに対する悪いイメージが少なく、吸うことに対する抵抗感や恐ろしさが非常に希薄なのだと感じます。それは大人たちの認識の低さが元凶です。
「みんなが吸ってるから悪いはずがない」
「親もずっと吸ってるし、吸うなとも言われない」
「テレビや映画で俳優が吸ってるところがかっこいい」
「大人らしくてかっこいい」
など、タバコに対して肯定的イメージがあふれています。テレビCMや町のポスターでもかっこよく爽やかな画像で至る所で宣伝されています。

ではタバコを新規に吸い始めないためには、どうすればよいでしょうか?

「タバコを吸うな」、という禁止を強制するよりも、知名度のあるかっこいい大人が、かっこいい禁煙の手本を示すのが一番だと思います。

売れっ子で時代のイメージリーダーとなっているイケメン俳優や一流スポーツ選手とかが、映画やCMの中でさりげなく、「タバコはかっこ悪いよ」「賢い大人が吸うもんじゃない」などというセリフでイメージPRができれば効果があるのではないでしょうか?

タバコを吸わないことがクールでかっこいい現代人のライフスタイルで、
「タバコなんて時代遅れ」、
「タバコを吸ってると異性にもモテず、出世もできない」
という社会風潮ができれば喫煙者は減るでしょう。

思春期や二十歳前後の若い世代がタバコに抱いている「かっこいい」イメージを、「かっこ悪い」「嫌悪すべき」のイメージに塗り替えていくべきです。実際、格好悪いわけですから。

若い世代への禁煙教育は、「タバコが体に悪い」、という知識を頭で理解させようとするだけでは効果が少ないでしょう。説教じみた説得は反抗したくなることもあります。むしろ、画像や音楽も利用した、解りやすく感覚的な禁煙キャンペーンが必要ではないかと考えます。

続く

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最近になってようやく日本でも禁煙に対する取り組みが広がってきました。

歩きタバコに対する罰金制度や、未成年喫煙防止対策であるタスポの導入、東京都内のタクシー禁煙など、行政や社会としてタバコ規制が始まってきましたが、世界的にみると日本はまだまだ甘いといえます。

経済協力開発機構(OECD)発表の「ヘルスデータ2007」で喫煙率(男性)を比較してみると、高い順に、トルコ:51.1%、韓国:46.6%、ギリシャ:46.0%、日本:41.3%、オーストリア:40.7%、メキシコ:39.1%、ハンガリー:36.9%、オランダ:35.0%、スペイン:34.2%、ポーランド:33.9%、スイス:31.0%、ドイツ:29.8%、チェコ:29.6%、イタリア:29.2%、デンマーク:29.0%、フランス:28.0%......となっています。

タバコの害が社会的に広く認識されている、アメリカ、カナダでは更に低く、アメリカ19.1%、カナダも19.1%まで減少しています。

喫煙率(男性)の比較

1965年ころの日本人男性は、なんと8割以上が喫煙者でした。吸うのが当たり前だったのです。しかし、その後は減少傾向が続き、最新の調査によると、日本人男性の喫煙者数は約2016万人、男性人口の40.2%です。女性は684万人の12.7%でした。

男性喫煙率は減少傾向にあるとはいえ、タバコの害が社会的に広く認知されているアメリカやイギリスなどの先進国は約20%ですから、その2倍という高い喫煙率です。先進国の中で、日本人男性の喫煙率はトップの高さが続いています。一般的に日本人男性の喫煙率の高さに関しては、決して「先進国」と胸を張って誇れない、恥ずかしい数字です。

気になるのは女性の喫煙率で、40歳以上女性の喫煙率は減少傾向にあるにもかかわらず、20歳代・30歳代女性の喫煙率は上昇しており、全体的に女性の喫煙率はわずかながら増加していることです。将来の日本人女性の健康が心配です。女性は男性の比べてタバコに対する抵抗力が弱く、余計に健康被害を受けやすいので、絶対に避けるべきです。女性とタバコに関してはまた後に詳しく述べたいと思います。

喫煙習慣は一度ついたらなかなか抜けないので、喫煙率を下げるには吸い始めを食い止めることが最も重要でしょう。喫煙者は20歳前後の学生のときから喫煙を開始していることがほとんどなので、学生や新社会人の時に開始しようという気持ちにさせないことが、喫煙率の抑制のために力を入れるべきポイントと考えます。

次回は、どうして吸い始めるのか、どうすれば吸い始めずに済むのか、考えてみたいと思います。

続く

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