タバコが体に悪いことは誰でも知っているはずですが、詳しくどのように悪いのかは意外と知られていません。タバコを吸っていると、肺がススで真っ黒になり、肺がんの危険が高まる、ということはよく知られています。真っ黒になった肺の標本のポスターやコマーシャルによってビジュアル的なイメージが強く人々に印象づけられているからでしょう。けれどもタバコの害はそれだけではありません。その外にも数え切れないほどの疾患のリスクを高めます。タバコには4000種類以上の有害物質が含まれますが、主要なものを挙げると、1) ニコチン 2) 一酸化炭素 3)タール系物質です。
急激に血中に吸収されたニコチンは交感神経系を刺激して血管を収縮し、血圧・心拍を高めて血管の負担を強めますから、全身の動脈硬化を進行させます。末梢の血流を悪化させるため、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めるほか、肌の血流が下がり肌が荒れてきます。
最近の報告によると、ニコチンは肺癌を発生させる原因ではないが、一度できた肺癌の成長を促進することが研究で解りました。
ニコチンはまた、脳内のドパミン放出ニューロンを変質させて、強い依存性を作ります。「依存性」とは、一般用語で言うところの「中毒」です。つまりやめられなくなる、ということです。
また、一酸化炭素は赤血球と結びつき、赤血球が酸素を運ぶ能力を強く阻害します。
そのため、全身の細胞に届けられる酸素量が減るので運動能力や思考能力が低下したり、代謝が低下することになります。息切れやスタミナ不足を生じたり、集中力や仕事効率も低下します。
タバコの煙には自動車の排気ガスと同じ程度の一酸化炭素が含まれています。一酸化炭素だけでいえば、タバコを吸うことは、走る自動車のマフラーを咥えて排気ガスを吸っているようなものです。
タール系物質は、いわゆるヤニの部分です。ベンツピレンの他、多数の発癌物質が含まれています。直接の肺癌だけではなく、体中の多くの癌の発生率を高めることがわかっています。長く吸っていると肺がどす黒くなるのはもちろんですが、自分が吸わなくても吸う人と長く生活していると副流煙を吸ってしまい、周囲の人の肺まで黒くなってきます。まったく迷惑ですね!
また、タバコを吸うことで、二次的に体内で大量の活性酸素とそれに随伴するフリーラジカルが発生することがわかっています。
フリーラジカルは接した物質を次々と酸化していき、組織を劣化させていきます。
コレステロールの一種であるLDLコレステロールはフリーラジカルによって酸化されて酸化型LDLになると、動脈硬化の進行を加速させます。動脈硬化は体中の老化の元であり、万病につながります。
~心筋梗塞~
また、心筋梗塞による死亡リスク(危険度)は、吸わない人に比べて、2.6倍に高まります。しかし、禁煙することで、数年で死亡リスクは吸わない人と同等にまで低下します。
お金をかけてタバコを買って死ぬ危険を高めることに何か意味がありますか?
~脳梗塞~
~慢性閉塞性肺疾患(COPD)~
喫煙者は、吸わない人に比べて平均12倍COPDになるリスクが高まります。
一日25本以上吸うヘビースモーカーは、リスクは22.5倍となります。
それでもまだ吸いたいですか? そろそろタバコやめませんか?
~喘息~
喘息は生活の中で発作を誘発する原因を避けて上手にコントロールしなければ死亡する危険も高い病気です。毎年6000人程度が喘息の激しい発作で命を落としているのです。タバコは喘息の死亡リスクも高めています。
~癌~
そのほかあらゆる癌にかかる危険度が高まります。活性酸素や発癌物質が、体内で増加するので、個人個人異なる癌になりやすい臓器が癌の危険にさらされることになります。
呼吸器系だけではなく、食道や胃といった消化管のほうにもタバコの煙は流れるため食道癌や胃癌も喫煙によって明らかに増加します。
癌予防には、まず禁煙することが第一です。
~免疫力低下~
血液中の白血球の増加、というのは、炎症が起きたときに反応性に増加するものです。
タバコによって全身、特に血管の壁で炎症が起きるため、その炎症物質に反応して白血球の数が増えてきます。白血球はある程度数がないと細菌感染に弱くなりますが、感染が無いのに過剰に増えた白血球は、そこから出る活性酸素が正常組織にダメージを与え、老化を促進します。
~肌の劣化~
タバコによる活性酸素が肌の色素沈着を高めるほか、タバコはビタミンCを大量に消費するので、コラーゲンの合成も抑制され、肌の構造が衰えます。タバコによる活性酸素の増加やビタミンCの消費は男性に比べて女性は影響が大きいようです。つまり女性はタバコに対する抵抗力が低いといえますので、美しく若々しくありたい女性は、化粧品やスキンケアをする以前にまずはタバコを吸わないことです。
~余命~
~認知機能低下~
フランス国立衛生医学研究所の今年の発表によると、35~55歳までの10308人の調査から、次のことがわかりました。
・喫煙者は認知機能検査において、最も認知機能が低い人々の割合が高かった。
・調査期間内に死亡する率は喫煙者において明らかに高かった。
・元喫煙者でも禁煙した者は、現在喫煙者に比べて平均的に言語機能が高かった。
・調査機関中に禁煙した者は、飲酒量が減ったり、運動するようになったり、野菜や果物を沢山食べるようになったり、などの健康習慣も身につく傾向があった。
要するに、タバコを吸っていると認知症、つまり痴呆になる可能性が高くなるということです。タバコによる脳血管の動脈硬化などが原因と考えられます。
このようにタバコは健康を蝕み、自分が苦しむばかりではなく、家族や周囲の人を悲しませ、労働力は減り社会医療費負担は増加します。つまり、タバコは社会悪なのです。
喫煙者の方には社会的責任を感じていただき、今すぐ禁煙に取り組むべきです。
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タバコの有害性をよく理解しても、禁煙しない人がほとんどなのはなぜでしょう?
あなたも、このサイトを読むくらい高い認識能力を持っているわけですから、理性的に考えたらタバコを吸う理由なんてまったく無いわけです。タバコが良いという科学的証拠は見出せません。それでも今この時にもタバコを咥えているのはなぜなのでしょうか?
喫煙習慣は、一度つくと、教育、学歴、社会的地位、知能、人格などとはほとんど関係なく、止められなくなります。人間は理性で行動しているように見えますが、実はそれよりも情動・感情・快/不快の原則により大きく支配されており、ニコチンを主とするタバコの化学成分は、あなたの脳内の情動(つまり、快/不快の感情)を支配するニューロン(神経細胞)群を完全に支配してしまっているからです。
これらのニューロンは理性のニューロンよりも支配力が上です。情動を支配するニューロンがニコチン依存となると、それらによって行動も支配されるようになり、知らず知らずにタバコを吸ってしまいます。
稀に理性や意思のニューロン達が情動に勝り、意志の力だけで禁煙できる人もいますが、そのような人は人口の5%以下です。
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タバコを吸うと、ニコチンは肺胞から速やかに吸収されて血中ニコチン濃度は急激に上昇します。血中に溶け込んだニコチンは、中枢神経系および末梢神経に存在する、ニコチン性アセチルコリン受容体(ニコチン受容体)と結合して次なる作用をもたらします。
ここでちょっと補足説明です。
体内の細胞、特に神経、筋、免疫系、内分泌系の細胞群は、様々な伝達物質を介して情報をやり取りしています。神経系の情報伝達物質で最も重要なもののひとつがアセチルコリンです。神経細胞の細胞膜の表面にはアセチルコリンを認識して結合する「受容体」と呼ばれる蛋白質分子があり、アセチルコリンと結合すると結合したという情報が細胞内に伝わり、その神経細胞の機能に応じた反応を引き起こします。
アセチルコリン受容体(AchR)にはいくつかの種類がありますが、大別するとムスカリン性アセチルコリン受容体(mAchR)と、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAchR)の2種があります。AchRのうち、ムスカリンという物質に結合して反応するものをmAchR、ニコチンに結合して反応するものをnAchR と呼びます。アセチルコリンはmAchRとnAchRの両者と結合して情報を伝えます。
また、ニコチン性アセチルコリン受容体を「ニコチン受容体」とも呼びます。
中枢神経系、つまり脳の神経細胞の中には、nAchRは広範囲に存在していますので、ニコチンは脳の様々な部位に影響を与えています。
その中でも特にニコチン依存に最も関与していると考えられているのが、中脳辺縁系と呼ばれる部位にある、ドパミン神経系です。
中脳というのは、脳の深部で、脳の芯に当たり、脊髄との境目付近にある、「原始的な脳」の構造です。中脳の中でも「腹側被蓋野」「側座核」などの部位には「脳内報酬系」として知られる神経群が存在しています。これはドパミン神経系(A10神経系)と呼ばれ、ここから伸びる神経線維が、脳の広い範囲に神経伝達物質であるドパミンを供給し、快感をもたらします。
詳しく言うと、ニコチンが中脳のこれらの細胞膜表面にある「α4β2ニコチン受容体」という分子構造と結合すると、その細胞の興奮をもたらして、その細胞から伸びたシナプス末端からドパミンが放出されます。すると、脳は情動的な快感を自覚するので、強化行動をもたらします。「強化行動」というのは、その行動が無意識的にますます頻繁に行うようになることで、つまりタバコを吸う行為が止まらなくなる、ということです。
このような「脳内報酬系」の神経作用を介する薬物の作用は、覚醒剤などの依存性薬物の作用と共通です。タバコは麻薬のようなもの、というのはここにも根拠があります。
タバコを吸ってニコチンを摂取しつづけると、ニコチン受容体の数が自然と減少してくるので、ますます多くのタバコを吸わないとドパミン神経の伝達が悪くなってきますので、自然と喫煙本数が増える傾向にあります。また、過剰なドパミン刺激に慣れてくると、その刺激が無いと非常に強い不快感・渇望感に襲われ、イライラしてきます。これが離脱症状で、タバコが止められない大きな原因です。
ニコチン依存症患者(多くの喫煙者のこと)は、タバコを吸う理由として、「吸うとリラックスできる」「ストレス解消できる」などといいますね。しかし、実際のところは離脱症状の苦しさをニコチン供給によって一時的に緩和しているに過ぎないことが多くの研究で解明されています。
喫煙習慣のある人は、中脳腹側被蓋野の脳細胞表面にある“α4β2ニコチン受容体”に、ニコチン分子をくっつけて、脳にドパミンをバラ撒きたい衝動に駆られているだけです。このα4β2ニコチン受容体を持つ神経細胞(これを「ニコチン依存脳細胞(ニコチン依存ニューロン)」と仮に名づけましょう)の働きが問題です。
喫煙をする人はしばしば、タバコを吸う「正当な」理由を述べます。喫煙者の中には社会的地位も学歴も知識も能力も高い方も多く、様々な「論理」も持ち出してタバコの「正当性」や「吸う権利」なるものを主張されています。けれども喫煙者が主張する「タバコを吸う理由」はニコチン依存症でない非喫煙者には全く理解できないものばかりです。
喫煙者はある意味とても哀れです。なぜなら、彼らの主張は全て、「ニコチン依存ニューロン」の命令で言わされているだけなのです。ニコチンへの渇望に対して、持てる知識をかき集めて、様々な理由を並べて吸う理由をこじつけているに過ぎないのです。
知識や判断ではタバコの害は十分に判っていても、ニコチン依存ニューロンに情動を支配されると、本人の意思はニコチン依存ニューロンの奴隷となり、逆らえなくなっています。全く逆らえないので、今度は自分で吸う理由を見つけて自分を納得させている、というのが喫煙者の内的心情ではないでしょうか?
自分の意思で吸っているつもりで、実はニコチン分子とニコチン依存ニューロンに脳が乗っ取られているのが、タバコを止められないあなたの脳の実態です!!
もしあなたが禁煙したいのなら、上で述べた「ニコチン依存ニューロン」の細胞膜上に存在するα4β2ニコチン受容体の働きをコントロールすることが必要です。
例えて言うとこうです。イメージしてみて下さい。
あなたの脳に「喫煙怪獣」が巣食っています。こいつはニコチンが無いと脳の中で大暴れするので、あなたは仕方なく毎日ニコチンを餌として与えなくてはいけません。ニコチン供給を止めて怪獣を追い出そうとしても脳が人質に取られているので、怖くて止められません。怪獣の弱点はあるのでしょうか?
詳しい「喫煙怪獣」の研究によって、「喫煙怪獣」の最大の武器であり、弱点でもあるのが、[α4β2ニコチン受容体]であることがついに解明されました。それはニコチン依存ニューロンの細胞表面にあります。
ここを攻めれば、「喫煙怪獣」は倒れ、あなたの脳から撃退できるはずです!!
さあ、攻撃目標は決まりました。


































