院長 平竜三のブログ診察室では伝え切れない、詳しい医療情報を語ります

歓迎されない理由(3):訴えが複雑で、しばしばメンタルケアも必要

  • 2009.05.13

なぜ複雑化しやすいのか?

 交通事故は、スポーツや転倒での受傷に比べて、症状が複雑で多彩になる場合が多いようです。

 交通事故後の患者さんの特徴をまとめてみます。

 
●被害者であることが多い。
 怒りや悔しさの感情が伴いやすい。⇒ 自律神経の失調を来たす可能性がある。
●リラックスしている所に不意打ちの衝撃を受けた場合が多い。
 防御姿勢を取れなかったために体の深部への衝撃が大きくなりやすい。また、恐怖感やフラッシュバックが残りやすい。
●医師や周囲の人から症状が理解されないことが多い。
 不安感が増長。フラストレーションが溜まる。他者への怒りが募るか、あるいは自分を責めることに繋がりやすい。
●加害者側や保険屋さんとのやり取りが非常なストレスとなる。
 痛みなどの症状だけでも十分に辛いのに、治療費支払いの打ち切り催促の電話や文書などが頻繁にあるのがプレッシャーとなる。また、症状を加害者側に証明するのに、文書による手続きが非常に面倒である。この作業は挫折する患者さんも多い。
●経済的に追い詰められる。
 突然の事故で働けなくなる場合もあるが、相手側が無保険だったりすると被害者であってもその場合の経済的保障を十分に受けられない場合もある。金銭的な困窮は非常に強い不安恐怖感情を引き起こし、不眠や鬱を合併することも稀ではない。

 
このような要因が絡み合うことで、事故で受傷した患者さんは、メンタル的な問題を引き起こしてしまった方も少なくありません。

 そのため、診察室での訴えも非常に長く複雑となりがちです。

整形外科の診療範囲を超える場合も……

 例えば心療内科などでは話しを聴くのが医師の仕事ですし、治療の一環でもあります。そのため、心療内科では多くは予約制で、患者さんの訴えを聴く時間枠を30分とか1時間とかを確保しています。

 それに対して、多くの整形外科外来では患者数が多いので一人の診察時間はどうしても確保できません。

 訴えの内容も、メンタル的要素や経済的問題などが主体となれば、整形外科医にとって専門外ですので、多くの場合は適切に対処ができません。

 
 整形外科を受診した場合、確かに症状や背景を医師に伝えることは必要ではありますが、大抵の整形外科の外来診察室は混雑しています。

 患者さんが待合室に沢山待っているので、できれば早く診察を終わらせて次の患者さんを入れたいと思っている医師にとって、一人で30分も訴え続ける患者さんはちょっと困るはずです。

 (脇で見ている看護師さんは目配せや表情で、「早くその患者さんは終わらせて次に回して!」というサインを送ってきますし!)

 
 メンタル的症状を合併していたり、経済的・社会的問題を抱えて訴えの長い事故患者さんを何度も経験すると、整形外科医師は事故患者さんに対してストレス感情が身についてしまいます。

 すると、事故患者さんが再び受診した時に反射的に億劫な感情が出てきます。「また交通事故の患者? 面倒だなー。できれば深入りしたくないな。」という気持ちを抱く医師は多いはずです。

 医師の職業上、患者さんに向かって直接はっきりとそのようには言えませんが、自然と冷たく対応してしまうことは有り得ます。

 
 (実をいうと、私自身も10年以上前の勤務医時代、あまりに多忙で精神的余裕もなかった頃ですが、事故後の患者さんに良い態度を取れなかったことがありました。患者さんをきっと不快な気持ちにさせてしまったことでしょう。今では申し訳なく思っています。)

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